契約妻
『契約妻』

欧米からタイに第二の人生を求めて住み着く人はかなりの数にのぼる。私の住んでいるパタヤだけではなくプーケットやサムイ、クラビなどに多い。バンコックなどの大都市には余り多くみられない。これらの共通点は自然が多く残り、かつ、海があるというのがキーワードである。
私の友人ジョン、彼はアメリカ人でニューヨークのファイアーマンである。日本だと消防士というとかなりステータスは低い、しかしアメリカではファイアーマンになるためには身体頑健だけではなく知力、胆力も必要で、なみいる応募者の選考の中から難関を突破した者だけが手にすることができる職業である。どんな危険の中でも身を呈して一般市民の生命と財産を守ることから市民から尊敬され、愛されている。

9.11世界貿易センターテロによって多くのファイアーマンが自己の危険を省みずビルに突入に多くの犠牲者を出したことは承知の事実である。ジョンはいつもこの話をすると涙ぐみ、多くの同僚の死を残念がる。従ってファイアーマンである事は一種のステータスである。故に敢えて消防士という言葉を使わずにファイアーマンと言った。
彼はある火災現場で左足を複雑骨折、大火傷を負った。労災が適用され、彼が生存している限りは給料が永久に支払われる優雅な身だ。ジュリアーニ市長からの感謝状と総務局からの労災認定書を持っている。要するに「生活は一生保証しますよ、どうかゆっくりとお体をお直し下さい」ということだ。
アメリカという国は良い国だ。日本の消防士が現場で負傷したら、一生タイあたりで優雅に暮らせる生活費を支給するだろうか。そんな訳でジョンは寒い冬の間、このパタヤでマンションと車を買ってゴルフ三昧に明け暮れている。また彼はコンガのプレーヤーでもあり、やはりパタヤで暮らしている他のヨーロッパ人達とメンバーを組みジャズのコンサートを時々開いている。

そのジョンに現地妻がいる
現地妻といっても固定したものではなく、正確には月極め妻と言った方が良い。どこから探して来るのやら、エスニックな感じのするスレンダーな長い髪の女が多い。ゴルフをした帰りにマンションに寄ると彼女が出てくる。時々、人が変わる。ジョンにどこから拾ってくるのかと聞いたら、ビアーバーだという。
「タダか?」
「いや、お金を払っている」
「いくら?」
「月2万バーツ」
「ホー」
毎日女を探しにあっちこっち行くのは面倒臭いので、ジャズのメンバー達と同じようにしている。月極めにすると洗濯はやってくれるし、食器洗いもやってくれるので便利だという。第一、女が喜ぶという。収入が保障されて3食昼寝付き、女の方も毎日男を探さずにすむので楽だと言っているそうだ。
そう言えばタイの女の好きそうなパターンだ。彼女達は何よりも安定を望む。余程不安定な生活に苛まれているのだろう。
「お金を払ってドロンということはないのか?」
「契約した時に1万、月末に1万払うからドロンするとすれば始めの1週間以内かな。でもまずないよ」とジョンは言った。
「女が収入が保障されているのでサービスが悪くなったり、マンネリ化することはない?」
「×××だけの事を考えれば確かにそれはあるだろうね。だけども×××だけじゃないからね。」
いかにも欧米人らしい意見である。私もかくあるにはあと何年かかるだろうか。

その話を聞いていたやはりゴルフ仲間の台湾人許さん、さっそく近くのビアーバーに行って彼女を物色、これまた中々の美女をゲット。15日間契約をして1万バーツ。数日後、許さんに会うチャンスが有ったので、どうしたと聞いた。彼は渋い顔をして手を大きく横に振った。
「どうしたの」
「あの娘、ダメよ」
「夜はディスコに行って朝3時まで帰って来ないし、昼間に家にいないから洗濯はしないし。たぶん昼間は別のお客と会っているんじゃない。1週間で終わりにしたよ。ハハハ」
ジョンの方が女を見る目が高かった訳だ。日本人は愛嬌、韓国人は顔、台湾人はスタイルで女を選ぶ、やっぱり1ヶ月も付き合うには我々東洋人は見た目で選ぶ気味がある。やはり内面的な所をしっかりと見て長期契約はしないといけませんね。
おわり








