■添乗員はやめられない パート1 ここだけの話

パート1 ここだけの話

私が旅行社に勤務していた頃は未だ添乗員という専門職はなく、営業所で受注した旅行は原則として同営業所でその営業にタッチした社員が添乗をするのが普通でした。どうしても所用で日程がとれない場合は同じ営業グループに属する職員、又は同支店の職員、それでも該当者がいない場合は後方部門に助勤を依頼して添乗員というものがその都度決定されていました。

客とのコミュニケーション密にすることにより、そこに人間関係を構築して以後の営業を進めやすくするのが第一の目的であった為にそういった選考がなされたのであります。要するに客の旅行先に同伴で顎足付きでセールスに行くようなものなのです。

加えて会社からは給料以外に添乗日当や支度金が支給され、自分の財布からは食事代も含め一切の持ち出しはないので結構良い実入りになりました。ですから優秀セールスマンは何でもいいからツアーを取ってくる、そして自分で添乗する、それによって代休が生ずる。この繰り返しで会社に出社するのは1年で半分という有り様。でもこれが一番実入りが良いのです。出世はしませんが。

更に、行く場所によっては添乗員に手数料を渡す「おみやげやさん」があり、最低でも売り上げの10%は懐に入りました。

30名の団体で例えばパリの免税店に行ったとしましょう。ネクタイやスカーフ、バッグ、香水、一人10万円買えば総額で300万円。添乗員のポケットには翌日計算書と共に現金で30万円、免税店のスタッフが届けに来る。確実に。当時はヨーロッパに旅行に15日間行くとなれば誰でも最低100万円、お土産代として持って行ったものです。

その位持ってなければ何故ヨーロッパに来たのかと他の客にバカにされるのがオチ。

アムステルダム(オランダ)のダイヤモンド、ジュネーブ(スイス)の時計、ナポリ(イタリア)のカメオ、ベニスのベネチアングラス、マドリード(スペイン)の革製品、ロンドン(イギリス)のバーバリー、ダンヒルなどなど数知れず。どうですか100万円あっても足りないでしょう。

昔は観光半分ショッピング半分、旅行社は手数料のたくさん入る所にツアーを組むのであって、決して旅行先に人気があるところに日程を組むのではないのです。

添乗員も心得たものでツアーの行程を充分お金を落とすように計算して運行したのです。

それでもヨーロッパ各地のお土産やさんは儲かったのでしょう。空港には店の営業が必ず数名出迎えていて「今回は当店をご利用くださいませんでしょうか、もしご利用いただければ・・・・・・」裏の話もアルデヨということ。

これが全都市これですから添乗員は添乗に来たのかセールスに来たのか大名旅行に来たのかわからなくなるはずです。

考えてみてください。30名として一人100万円、お客の手持ち金額の総額は3千万円で、そのうち添乗員が係わる店で買い物を30%したらどうなるか。なんと90万円が買い物の手数料だけで添乗員に入る計算になります。

おそらく今、添乗員をされている人たちは冗談じゃないと怒ると思います。当然です。計算の根拠となるベースが全て違うからです。

今ツアーの客の中でお小遣いで100万円持って来る人は一人もいないでしょう。クレジットカードは全員持ってます。でもせいぜい使って一人10万円でしょう。それからまず30名のツアーは珍しいと思いますが無いことはないでしょう。でも添乗員が連れて行く店で買い物をしてくれる人は極めて稀です。

旅行社や添乗員が連れて行く店は高いということが分かっているからです。使ってくれる10万円のうち2万円くらいでしょう。するとどうなります?

30名として2万円を乗じた10%ですから、良くて6万円。どうでしょうか。こんなものではないでしょうか。当たらずとも遠からずだと思いますよ。今ではそれらの全てが会社管理になってしまい添乗員には雀の涙ほどの「お小遣い」がお土産屋さんから支給されるということです。残念無念。

更に更に、少し頭の回る添乗員になると「計画的手数料獲得作戦」なるものがある。ヨーロッパですと大都市、ロンドン、パリ、ローマには旅行社がセットした観光の他に各自で好みの所に行けるように自由行動日を必ず設定しています。これもお客の為のように見えて実は添乗員の副収入の為にあるのです。

最近の若い人たちは「はい、明日は自由行動日ですからご自分の好きなところに」なんて説明しても困りはしないと思いますが、昔は右も左も分からない人たちばかりで、もしこんなことを言ったら「俺たち何処でご飯を食べたら良いのか」「添乗員はサービスに欠ける」などとクレイム(苦情)になることは目に見えています。当然添乗員はお客がそういう事を言ってくるのを計算していて、それでは「こんなオプショナルツアーに参加されたらいかがでしょうか?食事も付いていますよ」なんて誘導をする訳です。

この場合リドのディナーショーを一人三3万円で販売するのが良策だと思います。当時のコストは1万円くらいでしたから何と一人2万円儲かるのです。つまり、このツアーだけで60万円の利益、税金も所得税も住民税も消費税も健康保険料も何も引かれない「純益」60万円でも大きいのに当時のお金でですよ。

更に更にですよ。これは東南アジアが多いのですが、例えば台湾に行ったとしましょう。確かにヨーロッパほどお客さんはお金を持って来るわけじゃないのですが、それでも目的(女買い)の為に数十万円は皆さん持っていたと思います。

三泊四日の日程で平均一人の客が二日間は女買いはすると私の記憶にはインプットされています。(経験上まず間違いない数字)一万円のコストで一万五千円で売ったとすると、30名の団体では2回転ですから¥5,000×60=¥300,000の利益が転がり込んでくるのです。

私のいた旅行社は婦人団体から買春ツアー反対の抗議を受けて、添乗員がこれら女買いのツアーに係わることは御法度になってしまったのです。ある一面から見れば困ったことなのですが、添乗員としては客の絶対的要望があり、その為に来ているのですから誰が何と言ったって止める訳がない。

現地の旅行社の強い強い要請もあり、且つ自分の懐も要求しているので、結局は見て見ぬふりをしてやらせるわけです。(添乗員は影に隠れて計算の時だけ出る)加えて会社はノータッチ、監督官のいないゲームほど楽しいものはない。だってやり放題なんですから。それに困る人は誰もいないのです。関係者全員ハッピー。

最後には現地の旅行社から「添乗員様良くやってくれました。ご苦労様」と言ってどれでも好きな女性をあてがわれる。三泊四日のタダマン。女性のサービスの良いこと。ちょっとでもサービスが悪かったらクビにされちゃいますよ本当に。チップ?そんなものは受け取らないですよ。

添乗員というのは困った人種で、ちゃんと店のママから相手の女にお金と注意が行っているのに少しでも女に親切にされると浮き上がっちゃって、味をしめちゃってそれ以降台湾ツアーばかり作っているヤツがいるんですよね。