日本純情男児にタイ女性がほれた!
番外偏:日本純情男にタイ女性が惚れた
去ること昨年の三月、私の友人がある一人の中年男(年の頃は30代半ば)を伴ってパタヤにやってきた。
日本の中堅の塩化ビニール関連のメーカーに勤める「どこにでもいるサラリーマン」である。日本には妻と子どもが一人おり、仲も睦まじく、これといって家庭内に不和があるとは思えない。ただこの男、私の目から見れば堅物に映る。その証拠に愛読書は「サピオ」というから、さぞかし落合信彦系の信奉者であろうことが想像させられる。
断っておくが決してイケメン系ではないし、今はやりの「韓流」と呼ばれる甘いマスクで細身の長身、硬派では勿論無い。パタヤに着くなり、「メシを男三人で食ってもしょうがないから女でも調達して六人で夕食をしよう」ということになった。近くにあるカラオケ店に入り、早速物色。
この男、私の薦める女には目もくれず、プロの目から見て最も危険であると思われるわがままそうな女をゲットした。私は内心、この「どこにでもいるサラリーマン」明日は困ったことになるぞ、と想像しながら食事をした。何故ならば、多くのサラリーマンは世間知らずで若い女を選ぶのは良いけれど遊ばせ方を知らないばかりかセックスばかり要求するので、遊びたい盛りの女は途中から逃げ出してしまうことが私の経験からままあるのだ。丁度、このカップルはそのパターンに当たる。明日の朝が楽しみだ、とほくそえみながら夕食後別れた。
誰もが若い女の体を男としては欲しいものだ、その究極が「ロリータコンプレックス」となり、次第に低年層にまで手が及ぶことになる。しかし、自分の年と遊び方を知っている男は自分の要求に答えられる女を肌で感じられるようになり、自分の欲望に妥協できるようになる。だからこの男はその公式から言えば、昨夜は不満足な一夜を過ごすはずであった。
それがどうであろうか、朝食のテーブルに仲良く座り息もピッタリ、ベタベタするでもなく、かと言ってその女の目からは明らかに昨夜の行為について満足を意味する輝きを発するものがあった。この二人は「合歓」したのだ。私は一目でそう理解した。
三月といえばタイでは一年中でも最も暑い時期だ。外出でもしようものなら体から汗が噴き出てすぐにシャツを濡らす。長時間外にいるのは危険と思われる強い日差しである、あたかもその光線が質量を持ち体にこれでもか、これでもかと皮膚に突き刺さって来るように感じる。まるで殺人光線のようである。事実、日本の寒いところから来て、この殺人光線で肌を焼こうなどと考えている人は、日射病や熱射病になる。
いやがる二人を引き裂き、女には着替えにやらせ、男どもはサウナに入り涼しい所でマッサージにでもかかろうという結論になった。午後一時、二日目の行動開始であった。これがこれからの二日間、我々を苦しめる(楽しませる)全ての始まりであったことを誰が知っていたであろうか。いつもの通りナクルアにあるサウナに向かった。
二回ほど、ウェット、ドライサウナに蒸されて新陳代謝を促進し昨日まで溜まった老廃物を体外に放出する。私はマッサージでも二人に個室に入って全身にオイルたっぷり二時間塗って筋マッサージをしてくれるコースを勧めた。これは日本でもよほど時間と金の余裕が無ければ経験出来ないマッサージだからで、それと一糸纏わずスッポンポンになってするマッサージなので若い女とのアバンチュールが楽しめそうであったからである。
ところがである、この「どこにでもいるサラリーマン」についた女は入店して一週間しか経っていないド素人女だった。二時間後、部屋から出てきたこの「どこにでもいるサラリーマン」私にこう呟いた。
「ちょっと相談したい事があるのですけれど・・・」
いいですよ、何ですか?
「今日の六時の夕食、彼女と約束してますよね」
はい。
「その時、彼女をキャンセルして貰えませんか」
何?!だって彼女は携帯電話を持っていないし、連絡の付けようがないんだぜ!
「ええ、それは良く分かっています。ですから相談を」
それでどうして?
「ええ、サウナの女の娘の方が気に入ったんですよ」
もうやっちゃったのか?
「いえ、まだですよ」
サウナの娘、明日ということにしたらどうだい。
「ええ、でも、どうしてもこの娘が今日ホテルに来たいって」
あんた言葉わかるのかい、あんたもタイは初めてだし、この娘だって店に入って一週間目じゃないのかね。
「ええ、ボディーランゲージとでも言いましょうか、体で分かるんですよ」
何、何、何!?
仕方なく早速三者会談。
結論!食事の時、私がこのことを上手く彼女に説明して私か、私の友人が「どこにでもいるサラリーマン」の穴友達になる。その選択は彼女に任せて引き受けることに決定した。午後六時、パタヤクランにあるトップスというスーパーマーケットの二階、コカレストラン。窓際に陣取る四人、雰囲気は重たい。おそるおそる私が女に話しかける。
ちょっと「どこにでもいるサラリーマン」が体の調子が悪くて今日は休みたいと言っている。せっかく来たのだから、今日は私か私の友人が君のお相手をさせて貰いたい、ついては相手を君に選んで貰いたい。
しばしの沈黙。煙草の煙が横にスーと流れて線を引いていて、そして動かない。彼女の目がちらっと「どこにでもいるサラリーマン」を睨み、そして突然、女が発言した。
私、動物じゃないのよ。ふざけないで!!
プイ!と席を立ち外に飛び出した。マズイな、三人とも頭を抱えていたが「どこにでもいるサラリーマン」がおもむろに女の後を追って外に出た。窓際の席から外を見ると、女は大通りから西に向かって歩き出す。西には女の目指す場所は無いはずだ。かなり女も頭に来ている。案の定、五分もすると戻ってきた、そして今度は進路を北に取った。北に行くと女の働いているカラオケ店がある。
「どこにでもいるサラリーマン」は始め北に向かって走り始めたが、いないと分かってまた戻って来た所で女と鉢合わせになった。それは丁度私たちが座っていた窓際の席から一部始終が見える道路を挟んで反対側であった。女の目からは涙が頬を伝わっているのがハッキリと席から見て取れる。二人は路上で抱擁と口づけをしている。こちらから見ているのを知らずに。
男は言ったヘタな英語で「You love me ?」と言い、女は「Yes, I love you so much 」
ふざけるな!元を正せばテメエが撒いた種じゃないか。俺たちは悪者かよ。俺たちは善意の第三者だぜ、相談に乗ってやっただけなんだぞ。「どこにでもいるサラリーマン」は何とか上手いことを言って、その女を帰した。俺たちよりもずっと口は上手いじゃないか!初めから人をダシに使わずに自分でやれよ!何とかかんとか言って二日目は暮れていく。それにしてもサウナの女をここに呼ばなくってよかったな。とんでもないバトルになったぜ、きっと。
サウナの女は偶然にもその日は11時まで仕事で、仕事が終わってからホテルに来るという約束になっていたのであった。三日目、サウナの女を含めた4人(私と私の友人は女から綺麗に捨てられていた)は貸し切りボートでコーラン島の海水浴に出掛けた。楽しいのは二人だけで、我々は指を加えて二人の甘く見つめ合う姿と、いつも笑顔をたたえて何かを話すバカバカしい会話を聞いていた。日が暮れそうになったのでパタヤビーチに戻る船の中、彼は夕陽に向かって吠えた。「コップン カップ!」四日目の夕方、日本に帰る時刻である。
サウナの女は店を休んで空港まで「どこにでもいるサラリーマン」を送ると言って聞かない。私の友人は空港迄の二時間半、この二人に当てられっぱなしだったことを後日、私に告白した。最後の別れの時「どこにでもいるサラリーマン」は、なけなしの財布の中から二万円を女に差し出した。女は怪訝そうな顔をして「これは何?」と言った。勿論、それは日本のお金であることはいかにド素人だとしても分かっているだろう。
彼は言った「これは二日間の報酬ではない、おれの君への真心だ」
女は言う「私はその辺にいるパタヤの女とは違うの、一緒にしないで、だからそのお金は受け取れない、あなたが一刻も早くパタヤに戻ってきてくれるのを待っているから」
「どこにでもいるサラリーマン」はまた吠えた、「コップン カップ」
泣かせるじゃないですか?モテナイ男としては女から一度でもいいからそんな声をかけて貰いたい言葉ですね。その後、その「どこにでもいるサラリーマン」はタイに来ていない。しかし、何度もその女への贈り物は持たされた。女は彼のことを「ヒロチー」と呼ぶ。女はすでにそのサウナには勤めてはいない。
新しい男にだまされて結婚でもしたのだろうか、それとも「第二のヒロチー」に会って甘い生活にでも浸っているのだろうか。その後、パタヤで会ったという人を私はしらない。








